今週の社長のひとこと------------------------------------------------------------------
毎年、正月の楽しみは、まとまってドラマやアニメが放映されることである。
普段、ゆっくり見ることができないで、この手の集中講義は、うれしい。
今年は、NHK教育テレビのメジャーを見た。
主人公本田吾郎の父、本田茂治は、横浜のプロ選手だった。
メジャーから移籍してきた超一流の投手から、ホームランを打った後、
次のバッターボックスで頭部の死球を受ける。
死球の直後、病院に直行して、検査を受けることなく、
翌早朝自宅でなくなった。
ドラマのつくりとしては、展開は早すぎて、物足らなさが残った。
もう一つの問題は、頭部死球を受けた選手は、
全員、頭部のMRI検査を受けるべきか?いかなは別として、
頭部死球で翌朝、死に至るのは、たんなる事故ではない。
まず、直行した病院で頭部CTを受けたと仮定する。
しかし、これでは、不十分である。
もし、すでに意識低下や強い頭痛や歩行障害などの症状があれば別だが、
頭部CTには、直後の、死球による脳浮腫を検出する感度はないと考えてよい。
そこで、頭部MRIによるメニューから拡散強調画像法を選ぶ、
拡散強調画像法ならば、初期の脳皮質の浮腫をある程度見逃さない。
軽度の脳浮腫でも検出できる。
インフルエンザの季節になったが、インフルエンザ脳症の初期症状は、
頭部CTでは検出できないので、救急外来でCTをとっても安心してはいけない!
2003年にMRIの基礎原理の発見者がノーベル医学生理学賞を受賞した。
ローターバー博士とマンスフィールド博士である。
この二人の基礎技術によって、非常に短時間で、ブレインアタックと呼ばれる
脳梗塞、脳浮腫が、早期に発見できるようになった。
本田茂治選手は、頭部死球の後、この脳検査を受けるべきであった。
しかし、これだけでは、不十分である。
例え、頭部死球後のCT、MRIの検査で異常が発見できなかったとしても、
12時間後、あるいは24時間以内にもう一度同じ検査をすべきであった。
この2度の脳のMRI検査によって鑑定されていたら、
本田茂治選手は死ななくて済んだ可能性が高い。
さらに、2ヶ月前後にもう一度、脳検査を受けることもありうる、
慢性硬膜下血腫が発症する可能性が残されているからである。
したがって、頭部死球による死は、事故ではなく、
その後の選手管理を誤った管理者責任である。
もし、医師がその場で診察して、翌日の検査でよいと判断したのなら、
それは、正当な判断とは言い切れない。
頭部死球でピッチャーは退場させられるルールになっているが、
そこまでシビアにルールを決めているのであれば、
2回以上の脳検査フォローは、プロ選手には必要だろう。
1泊病院で入院するぐらいの覚悟が必要である。
さて、話はそれたが、本田吾郎が、心にくいセリフをはく。
『野球の面白さは俺が保証する!』
これは、なかなか言えない言葉だ。いろいろな職業に従事している人がいるが、
「自分の仕事の面白さは俺が保証する!」といえる人は多くはないかも知れない。
自分を振り返ってみた。
昨年クリスマスを前にして他界した最愛の祖父は、
海の面白さ、漁師の面白さを背中で教えてくれていたことに気がついた。
もちろん、寡黙な祖父は、面白さを保証するとは言わなかった。
しかし、少年だった私は、祖父の背中と行動の中で、海に魅せられていった。
脳はどうだろうか?
はっきり言って、たまらない!たまらないほど面白い、究める価値がある。
肉体とともに鍛えぬく価値が脳にはある。
昨夜、TVをつけたら12chでカンブリア宮殿をやっていた。
出演者は、ニューヨークヤンキースの松井秀喜選手とサッカーの三浦和良選手である。
彼らに共通していたことが2つあった。
小学生の頃からプロ野球選手やプロサッカー選手になることに迷いがなかったことである。
もう一つは、もし野球選手やサッカー選手でなかったら、何になっていたか?
という質問に、二人とも、他は考えられないと答えていた。
同じ答えを10年以上前に聞いたことがあった。
黒澤明監督からである。
1994年、いずれノーベル医学生理学賞を受賞することになったローターバー博士が、
京都賞を受賞した。その2人しかいない日本の友人の一人として、京セラの迎賓館まで
ローターバー博士のご家族とともにお供させていただいた。
その年、黒澤明監督も京都賞を受賞された。
そこで、わたしは、失礼を省みず直接、監督に、
「もし、映画監督になられなかったら、どんな職業になられていましたか?」とお聞きした。
ところが、烈火のごとく「おれは、映画を作るために生まれてきたと思っている。」と
叱責されてしまった。
青ざめて、言葉を失った私をみて、
その後、語調を変じてやさしくフォローしてくださった。
てっきり、絵を書くのが好きだとおしゃっていたので、
絵描きになっていた…?という答えを予測していたが、まったく映画から、ぶれてはいなかった。
松井選手、三浦選手、黒澤監督に共通する心構えである。
超一流の条件の一つかも知れない。
彼らは自分の大好きなことをすることで、一番脳が働くのだろう。
そして、その分野を究めるための脳番地を、日々育てているのだろう。
大好きなことは、もっとも脳番地が働くのである。
三浦選手は若い頃より、今の方が魅力的である。
松井選手は、巨人時代より、今の方が存在感、風格がある。
松井選手は、すべてのホームランを詳細に覚えて、状況説明
できるという。
ズボシだった。ある意味、そのぐらいはできると予測していた。
それほど脳番地機能を育てて使えなければ、瞬間的に
球筋を見極めて、バットコントロールできるものではない。
松井選手の脳の使い方が、そうなのである。
三浦選手の言動からも、脳番地の使い方が勉強になった。
その脳番地の使い方は、ここでは、教えない。
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参考:
メジャー、Major http://www3.nhk.or.jp/anime/major/
カンブリア宮殿 http://www.tv-tokyo.co.jp/cambria/
京都賞 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%AC%E9%83%BD%E8%B3%9E