脳細胞は環境次第で初期化するのか?
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先週、理化学研究所の小保方晴子博士らが行った研究プレスレリースが
公表され、話題になりました。
Dr.Katoは、2つの点で、かなり共感しました。
一つは、小保方博士が、30歳である点です。わたしが、脳活動を
非侵襲に計測するfNIRSの原理を見つけ、証明したのが30歳でした。
そこで、比較しながら彼女の心情を考えて見ました。
小保方博士は、ラボのトップをまかせられ、すでにスタッフを
抱えている点で、大人の研究者であり、かつ、恵まれている環境と言えます。
さらには、
大きな組織に属しているので、マスコミも華々しく展開しました。
このように、社会が評価してくださると、
今後の研究はさらにやりやすくなるのは間違いないとおもいます。
私の場合は、無名なだけでなく、大学院博士課程の途中であり、
研修医の身分でした。ですので、fNIRSの発見に伴ってまったく
社会的なインパクトは何も起こりませんでした。
その後の研究費や国際学会への渡航費もほとんど自前同然でした。
しかし、知らない間に、国際的な関心が高まり
日本や海外の企業がfNIRSの開発をはじめ、色々な研究者たちが
「私たちは、世界で初めてfNIRSの○○をやった」と言い始めました。
その一方で、
未完成なfNIRSを世に出した責任と重圧が大きくのしかかりました。
それから、その重圧を解消するまで20年の歳月が必要でした。
大きな組織に属しているので、すでにマスコミの情報戦争を
コントロールすることは困難だとおもいます。
ここから重要なのは、
小保方博士らが、未来に何を見たいと思って研究されていくか?
これが、重圧を払う唯一の道だと思います。
2つ目は、細胞と環境因子の関係です。
脳の学校は、創設時より、研究部門を「脳環境研究部門」と命名して
研究を継続してきました。
これは、脳細胞の成長が、自分の体の中の要素、すなわち、
内因性因子だけでなく、環境による外因性因子によって引き起こされる
と確信したからです。
今回の小保方博士らの研究は、細胞が環境因子によって
リセットされて幹細胞にもなる現象を詳細に調べておられます。
従来、細胞が環境因子、化学性物質によって変異して、
癌化することが分かっていましたが、
悪玉でなく、善玉にも変わることが面白いです。
このように、我々の細胞が、自分自身のコントロール下にあるだけでなく、
環境と共存していることを再認識することは、
研究においても、実生活においても意義深いことだと思いました。
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