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2012年11月 6日 (火)

一つの科学的発見の運命とノーベル医学生理学賞雑感

  山中教授のノーベル医学生理学賞は、日本人二人目ということで、
 日本人として誇らしいことは間違いない。

 しかし、私にとってより身近なノーベル医学生理学賞者は、
 2003年にMRIの発明でノーベル医学生理学賞を受賞された
 ポール・クリスチャン・ローターバー博士である。
 すでに、ローターバー博士は他界されているが、
 恩師の印象を思い出しながら、現在の山中教授との違いを考えてしまう。

 大きく両者が違う点は、3つある。

 一つ目は、発見からノーベル医学生理学賞受賞までの期間である。
 
 山中教授が6年、ローターバー博士は、Nature誌に1973年に掲載
 されてから30年である。
 (http://www.nature.com/physics/looking-back/lauterbur/index.html

 NMRも含めて、磁気共鳴の分野からは、それまで、ノーベル化学賞など
 複数の受賞者がいたにもかかわらず、ローターバー博士の受賞に
 時間がかかったことには多くの理由が推測される。
 この理由に関しては、いずれ機会があるときに述べてみたい。

 二つ目は、MRIは、受賞までの過去30年で、それまでの医学の教科書を
 隅々まで、MRIを使った手法によって書き換えてしまっていたことである。
 
 実際、MRIを知っていても、ローターバー博士を知る人は少ないだろう。
 まして、1973年のNatureの論文を引用して論文を書く研究者も
 すでにまれである。
 つまり、MRIは、私たちの医療の常識になり、科学者の顔は
 もうすっかり消えているのである。
 
 勿論、専門家の国際学会では、ローターバーレクチャーとして
 博士の名を冠した招待講演が主催されている。
 このように、科学の発見は、その発見者の名を超えて、
 正義に浸透しなければその真価を発揮したとは言えないだろう。

 三つ目は、科学的発見の運命の違いである。

 「それは、わたしの古い仕事です。」と言われて、20年前のローターバー博士には、
 全く気負いがなかった。
 MRIの成功の影には、ローターバー博士の発見以上に、幸運があったと思う。
 
 その幸運とは、それまで解剖学者、病理学者が積み重ねてきた知見を
 ほぼ反映する形で、MRIの撮影が可能であったことです。
 
 もし、MRI装置から画像が構成されても、その画像が、
 実体とかけ離れた映像であったなら、ここまで医学に浸透することは
 なかったと思う。また、MRI装置に使われる磁気の人体への影響が
 最小限だったこともあげられる。

 このように考えると、万能細胞を介した細胞の初期化の発見が、
 MRIのような人類を傷つけない発見なのかは、その運命が分かっていない。

 発見者の山中教授の真剣な顔の中に、一種の畏怖感、恐れのような
 想いも感じるのである。
 繰り返すが、ローターバー博士には、全く気負いがなかったし、
 博士は、ずっと研究の最前線にいられたが、MRIは、博士の発見から
 10年が経った1980年代には、多角的に最前線が広がっていった。

 わたしは、21世紀前半の課題は、再生医療より、
 やはり超高齢化に伴う脳問題だと思う。
 
 日本人の超高齢化は間違いなくあと50年以上継続するだろう。
 21世紀後半に、再生医療の幸運を見る事ができるのか? 

 万能細胞から変異したどのような薬物でも死なない
 進化した人食いマウスが実験室から抜け出したら、
 どのようになるのだろうか? それは、素人の妄想だろうか?

  比喩的な表現をしましたが、
 この素人の妄想を否定する根拠も,肯定する根拠もまだありません。
 例えば、癌化する細胞は、想定出来ない、制御できないシステムにあることを
 意味しています。

 科学の発見がすべてプラスに働かないことは原爆・水爆の開発など
 過去の歴史が示しています。

 初期の段階でこれから起こる善悪をすべて
 予測できないところに人間の脳が扱う科学発見の難しさがあります。

 もしかしたら、論文の偽造など相手にしている場合でないほど
 深刻な問題が横たわっているかも知れないと思うことがある。

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