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2012年3月 6日 (火)

磁石の力で脳を治療する

 脳の医療は色々な物理現象を用いて、外側からは見えない脳の中を
 画像化して見えるようにしたり、
 時には外科手術をすることなく、脳の中を治療することもします。
 
 医療が利用する“色々な物理現象”の中でも、
 特に“磁石の力”は、大きなアドバンテージを与えています。

 脳の学校でもよく使う「MRI」も、磁石の力によって
 脳の中身を画像にして見せてくれます。

 皆さんが聞いたことのある「CT」でも、脳の中を見ることができるのですが
 放射線を使うため、体への影響を無視することはできません。

 そのため、MRIなどに用いられる磁石というのは、
 何より体に害がない点で、安全な医療技術として利用されているのです。

 みなさんの身近で磁石を利用したものと言えば、
 絆創膏の内側に磁石が貼ってある有名な商品でしょう。

 肩こりに効くというこの商品についている磁石の強さは、
 MRIで使用している磁石の強さの数百分の1。
 
 数年前にDr.KATOが出演した
 「所さんの学校では教えてくれないそこんトコロ!?」という番組で
 所ジョージさんも、Dr.KATOの脳個性鑑定を受けましたが、
 その時にMRI撮影を受けたあと、
 「何か気持ちよかったよー」と言いながら出てこられたのは、
 案外、磁石の力で、MRIが超強力肩こり治療器になっていた
 からなのかもしれません。
 
 ※MRIと磁石について、もっと知りたい方はこちらをご覧ください。
 http://www.nonogakko.com/indiv/mri.html

 ■■■ 磁気を打ち込んで脳を治す ■■■

 さて、今日の「磁石の力で脳を治療する」というのは、
 決して肩こりの話ではありません。

 もう1つ、医療や脳科学のなかで良く知られた磁石を利用した機器に
 「経頭蓋磁気刺激法(通称:TMS)」というのがあります。

 一般的にはあまり知られないと思いますが、
 専門家の中では昔からよく知られる機器の1つです。

 TMSは、「経頭蓋」というように、まさに皮膚や頭蓋骨を通過して、
 磁気刺激を脳に到達させる方法です。
 皮膚や頭蓋骨を通過するので、手術で開頭する必要がありません。
 
 TMSの原理は、頭よりも少し大きめの8の字型のコイルに電流を流し、
 それによって発生した磁場を刺激として、
 脳の活動をコントロールする方法です。

 昔は特に倫理規定もなく、実験で長時間(数秒以上も)
 磁気刺激を与えて、擬似的に脳梗塞状態を作っていた時期も
 あったようですが、今は医師の立会いのもと、
 1秒よりもかなり短い刺激に限定されて利用することができます。

 近年では、このTMSを用いて、手足の動きに関する脳卒中の部位を
 繰り返し刺激することによる脳卒中の後遺症の治療が始まっています。

 先月のNHKスペシャルでこれが紹介されたので、
 目にした人も多いのではないでしょうか。

 障害の範囲や程度などの条件が合った場合に、この治療を行うと、
 かなり手の動きなどが回復する場合が報告されています。

 最近は、うつ病治療にもTMSが使われている場合があるようですが、
 そもそもうつ病の責任病巣が明らかになっていないのに、
 TMSで本当に根治するのか?については、まだまだ疑問が残ります。

 このように、磁石の力というのは、体の中を画像化したり、
 磁気刺激で脳梗塞の後遺症を軽減させたりと、
 数百年前ならSFとも言える夢を実現させています。

 TMSは脳に局在的に、強烈な酸素消費を引き起こすことは
 脳の学校のCOEという方法で証明することができます。
 そして酸素消費によって、脳は変わっていきます。
 
 元来、リハビリのセラピストや、学校の教師などは、
 そのようにして人を成長させたり治療したりしてきたのでしょう。

 人の手によって酸素消費を引き起こして、徐々に脳を変えていく。
 TMSほど強烈な酸素消費じゃない分、時間はかかりますが安全です。

 TMSを使った時のように、人はお互いに影響し合って(脳を刺激し合って)、
 酸素消費の負荷を与え合って共に成長していくものなのでしょう。

 ※今日のお話しの詳細は、次回の脳科学講座でもお話しします。

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