« 2011年12月 | トップページ | 2012年3月 »

2012年2月25日 (土)

本物のサイエンティストとしての生き方とは?

2月5日と12日に中山和義さんがパーソナティをされている
 ラジオ番組「人生を変えた言葉」に出演する機会がありました。
 
 下記のサイトでそのときの内容を聞くことが出来ます。

http://jinseinokotoba.net/?guest/023.html

 私の人生を変えた言葉は、1992年の夏に、MRIの国際学会で
 発表した研究論文に対して届いた、米国からの一通のファックスです。

 その主は全く面識のない米国イリノイ大学の教授からでした。
 教授の大学院生は、私の研究論文を博士課程のテーマにしたいので、
 是非、一緒に研究してくれないかというものでした。

 驚いてよく調べてみるとその教授は、MRIの創始者でポール・クリスチャン・
 ローターバー博士であると知りました。

 当時、MRIの黎明技術にゾコンだった私は、心の中に、何か、霊的な
 フルエというか、何か心が揺さぶられる感じがしました。

 その後、ローターバー博士とやりとりが続き、2004年博士が京都賞を受賞した際に
 日本における二人の友人の一人として招待されました。

 ローターバー博士は、お会いする日本人に私の研究を丁寧に説明しながら紹介
 してくださいました。

 日本人から、外人へ紹介された記憶もないわたしを
 外国の碩学高名な博士が自分自身を日本人に紹介してくださる様子をみて、
 私のサイエンティストとしての世界観、国家観に強い影響を与えたと、
 改めて思いました。

 同時に、サイエンティストとしての生き方に確信と自身を持ちました。
 科学の世界には、確かにわずかひとにぎりの本物のサイエンティストと
 言われる人物とであうことがあります。
 本物のサイエンティストは業績で見分けるだけでなく全体論の中で、自然と交わるための
 良識を体現して生きています。
 
 新しい発見をすることよりもっと困難なことは本物のサイエンティストとであうことです。

 人生を変える言葉は、さりげなくやってきますが、やはり自らの行動によって
 得られるものだと思っています。

 人生を変えた言葉「一緒に研究をやらないか?」

  http://jinseinokotoba.net/?guest/023.html

| | コメント (0)

2012年2月21日 (火)

脳の働きのコアを知る

    我々が社会で生きていくためにコミュニケーションはとても重要です。
  特に、言葉をつかったコミュニケーションは、相手の話を聞いて、
  自分の意見を発言することがベースになります。
 
  相手の話を理解する「理解系脳番地」は、
  コミュニケーションのはじまりとも言えるでしょう。  
  これまで、理解系脳番地は、
  音を聞く聴覚系脳番地よりも後ろにあると理解されてきました。

  ■■■ 言葉を理解する脳 ■■■

  左耳の後ろのあたりが、いわゆる言葉を理解する理解系脳番地で、
  専門用語では「ウェルニッケ野」と呼ばれています。

  このウェルニッケ野は、約140年前の1874年、ウェルニッケ医師によって
  発見されたので、発見者の名前を取って、今もこのように呼ばれています。

  ウェルニッケ医師は、一人の脳梗塞の患者さんに出会いました。
  その患者さんは、流暢に話すことができるのに、
  相手の言葉をまったく理解できないという症状を持っていました。
  
  ウェルニッケ医師は、その患者さんが亡くなった後に、
  脳を解剖して検討した結果、
  左耳の後ろ辺りにある脳番地(ウェルニッケ野)に
  脳梗塞が起きていたことを確認したのです。
 
  このウェルニッケ野に関して、
  今、脳科学界に物議を醸す話題が提供されました。
  それは「ウェルニッケ野の場所が違っていた!」という、
  ある論文から始まっています。

  この論文では、「ウェルニッケ野は、
  ウェルニッケ野の前方にある聴覚系脳番地より
  さらに前に位置している」という主張をしています。

  つまり、脳損傷後の解剖によって位置が決められた当初の研究に対して、
  この新しい主張は、生きている人の脳のはたらきを赤く塗って見せる
  科学技術から得た知見をもとにウェルニッケ野の位置を推定したのです。

  ■■■ 脳科学界のローテク vs. ハイテク ■■■

  こうしてみると、脳科学界のローテクとハイテクの論争が
  巻き起こったと理解できます。

  しかし、脳科学は解剖によって進歩してきた学問であり、
  ローテクだからと言って軽視していいはずがありません。

  解剖によって見つかる形の情報(損傷の部位)はまさに事実であり、
  それによって損傷を負った人の症状もまた事実。
  否定するにはそれなりの論拠が必要だと考えるのが一般的な考え方です。

  ハイテク機器を使って推定した脳の活動場所は、
  果たして本当に、ローテクよりもいつも正しいと言えるのでしょうか?
  
  ハイテク機器が、どんな指標を使って、どんな風に脳の働きを測っているのか、
  よく知った上で判断されなければなりません。

  今や技術進歩によって生きている脳の働きを見える化できるようになっています。
  テレビで、「●●の脳の場所が活動しているのがわかりました」と
  脳の特定の部位に色がついている画像をみたことがあるのではないでしょうか?
  
  このように紹介されている情報のほとんどは、
  脳が働いたと判断するために「血流の増加」を観察しています。
  「血が増えたら、脳が活性化している」
  という極めて単純なロジックに基づいています。

  今、話題になっているウェルニッケ野の位置が違うのではないか、
  という主張も、この血流を使った論文を総括して導き出されています。
  
  ところが、血が増えようが増えまいが、脳ははたらくことができます。
  
  なぜなら、本当に脳が活動している場所では、酸素が消費されることが重要で、
  酸素を消費している場所こそ、まさに「言葉を理解している場所」と言えます。

  血が増えるのは、実際に酸素を使っている場所の周りで、
  酸素が足りなくなるかもしれない万が一の時に備えて
  酸素を供給するために血流が増加しているのです。

  つまり、いくら数億円するようなハイテク機器でも、
  血が増えたことでしか脳の変化を観察できないハイテクでは、
  ウェルニッケ野で酸素消費されていることが見えず、
  代わりに、ウェルニッケ野とは違う場所で血が増えていることを、
  さも脳がウェルニッケ野と違う場所で反応しているように
  勘違い(誤診)するのです。
  
  「科学」。
  これは現代の日本人にとって、ある意味、
  非常にコンプレックスを掻き立てる言葉です。

  そして、その科学の真意を理解していなくても、
  「科学」と名がつくだけで、何でも正しいと思いこんでしまったり、
  自分の考えやローテクよりも優れているのではないかと信じてしまったりしがちです。

  しかし全くそんなことはありません。
  科学者の言うことを鵜呑みにしない教養を、
  専門家だけでなく、一般の人にも、ぜひ持ってほしいと思っています。
  
  脳の学校では、脳が酸素を消費する場所をピンポイントで捉える技術をもって、
  脳機能計測・解析を行っています。 

  この技術を皆さんと共有することで、脳科学を社会で活かす素地ができてくると
  確信しています。

  脳の酸素を捉える技術については、昨年末の12月に弊社主催で開催した
  「脳機能NIRS20周年記念セミナー」でも一部ご紹介しました。

  「第8回脳科学講座」では、より詳細な情報をお届けします。

  先日のセミナーへお越しになれなかった方、
    再度正しい脳の活性化についての知識を得たい方々は、是非足をお運びください!

| | コメント (0)

« 2011年12月 | トップページ | 2012年3月 »