« 2011年9月 | トップページ | 2011年11月 »

2011年10月26日 (水)

脳相診断でわかる“生涯元気”の脳ハウ10ヶ条

  平成20年の日本人の平均寿命は、男性が79.6歳 、女性が86.4歳です。

 人間が生きられる時間は、死亡年齢の統計が取られるようになってから
 私たちの命の長さを計る目安として認識されます。

 平均寿命から考えると、「人生80年」は決して夢ではありません。
 80年間の月日を簡単に頭の中で想像することはできませんが、
 それでも80年を目指すために、お手本となる高齢者の方々は
 たくさんいらっしゃいます。

 では、みなさんは、どんな80年を過ごしたいと思いますか?

 例えば、80歳までの人生を仮定した場合、
 息を引き取るその前日まで元気に動き回っているのがいいか、
 最期の10年間を病院のベッドの上で過ごすのがいいか、
 考えてみてください。

 80年の時間が与えられているなら、
 79年364日を健康で過ごすか、
 70年を健康で過ごすか?という選択です。

 もちろん、多くの人が前者を選ぶはずです。
 そして、それは生きている年月だけでなく、
 「健康寿命」が長いことを願っているということの現れです。

 健康寿命とは、その名の通り「健康の寿命」。
 80年の命でも、健康に生きている期間が70年なら、健康寿命は70年。
 80年の命で、健康に80年生きたなら、健康寿命は80年。

 最新医療によって、私たちは簡単には死ねなくなりました。
 それと同時に、ベッドに横たわる期間を長くするか、短くするかは、
 私たちの30~70代の過ごし方によって決まるのです。

 Dr.KATOが信頼を寄せる遠藤明医師は、かかった病気を治すだけでなく、
 「健康寿命」を延ばすための診療を行っていらっしゃいます。
 体の健康寿命を延ばすノウハウは確かにあるようです。

 ■■■ 脳の健康寿命を100歳まで保つ ■■■

 体にはたくさんの臓器や器官がありますが、
 脳の寿命と比べると、骨や筋肉などの方が寿命が短いと言われています。

 ですから50代を過ぎると、どうも足腰が痛んできたり、
 筋力が低下してきたりします。
 これはある意味で、時間に逆らえない老化現象であるとも言えます。

 しかし、若いころのように100mを走り抜けることができなくても、
 頭の回転は、むしろ若者よりも含蓄があって、キレのある働きを
 している高齢者はたくさんいます。

 脳は100年たっても、細胞を使い切ることができないと言われています。
 生まれた時からほとんど使っていない赤ちゃんのような細胞が
 高齢者の脳の中にも眠っているのです。

 Dr.KATOが前から主張しているように、思考系脳番地の旬は50代以降。
 若い人にはない経験の蓄積によって、幅広く柔軟な思考ができるようになります。

 そのような意味で、多少、物忘れが増えたからと言って悲観せず、
 思考系脳番地を深めるような活動を増やした方が、
 脳の健康寿命を延ばす取り組みになります。

 脳の健康を増進する日々の過ごし方の工夫や心構えはこれだけではありません。
 Dr.KATOにはまだまだ、50代以上の人に伝えたいことが山ほどあります。

 そこでこの度、Dr.KATOの新著「100歳まで成長する 脳の鍛え方 」(主婦の友社)という
 本が11月に出版されます。

 そしてこの本の内容をまとめた、「脳相診断でわかる“生涯元気”の脳ハウ10ヶ条」
 の講演を、12月11日の「脳の健康医療セミナー」で行います。
 
 ■■■ Dr.KATOの新著『100歳まで成長する 脳の鍛え方 』 ■■■
 
 「脳の形」は一人一人違い、そして自分の意思で変えることができます。
 意外と知られていませんが、脳は、若い頃だけ成長するものではなく、
 100歳までは形が変わるということから、いくつになっても、
 定年になった後でも進化していくものです。

 実は、中高年こそが脳の成長と個性が一番輝く時期。
 本書は、あなたがこれまでに知っている脳の常識を打ち破る、
 脳についてのまったく新しいアプローチを試みています。

 脳のしくみ、老化する脳、老化しない脳、100歳まで脳を成長させる秘訣などを解説。
 さらに、疲れやすくなった、何もやる気が起きなくなった、物忘れが激しくなった
 などの老化による悩みの症状別トレーニング法を分かりやすく紹介しています。

 誰もがすぐに実践できるノウハウが満載です。
 いつまでもイキイキと、そして自らの力で、脳を変えていくことができ、
 これからの人生にさまざまな可能性をもたらしてくれる一冊です。

 ――参考――――――――――――――――――――――――――――

 ※この内容は、12月11日に行われる
 「脳の健康医療セミナー2011」の下記の講演で紹介されます。

  V.脳の成長を見る脳画像MRI
     演題:脳相診断でわかる“生涯元気”の脳ハウ10ヶ条
        ~100歳まで成長する 脳の鍛え方~
     講演:加藤俊徳(脳の学校代表)

  ぜひ貴重な講演を生でお聞きください!
  http://www.nonogakko.com/research/brf2011.html
 ――――――――――――――――――――――――――――――――

| | コメント (0)

2011年10月12日 (水)

脳画像で前頭葉の成長が見える

「人の人たる所以(ゆえん)」とまで言われる前頭葉。

 巷ではアドレナリンとか、セロトニンとか、目に見えない物質を語って
 前頭葉の働きを論じる科学者たちがいます。

 そもそも生きた人の脳で、そういった化学物質の移動を、
 リアルタイムで観察することは今のところは難しく、
 ラットなどの小動物を使った実験結果を誇張しているに過ぎません。

 しかし小動物の前頭葉と、ヒトの前頭葉の細胞の構成は異なっているので
 そもそもネズミに当てはまることが、ヒトにも当てはまるかどうかは
 きちんとした検証が必要です。

 私たちヒトの、生まれて間もない前頭葉は非常に未熟です。
 何十年もかけて前頭葉を成熟させていく過程を経て、
 社会で人と交わり、仕事をして、生活をしています。

 では前頭葉の成長は、どのように捉えられるのでしょうか?

 ■■■ 脳画像が動かぬ証拠 ■■■

 皆さんもご存じのように、現在の医療では「写真」を見て
 体の様子を知ることができます。

 それらの「写真」には、レントゲン、CT、MRIなど
 様々な種類があります。
 医療ではこれらの写真のことを「画像」と呼びます。

 レントゲンは、最も簡便に撮影することができますが、
 内臓の細かな状態までは観察できません。

 CTでは、内臓の様子を知ることはできますが、
 放射線を浴びるために、病気がある場合や病気が疑われる際に、
 あえて選んで撮影する放射線画像法です。

 MRIは、体内の様子を最も鮮明に映し出す画像です。
 放射線も使わないので、体にも害の無い技術です。

 脳の様子を映し出すMRIは、その時の脳の状態を動かぬ証拠として
 見せてくれます。

 医療では、脳画像は「病気があるか、無いか?」という観点でしか
 診ることはありません。

 しかし、脳の学校が目指す「脳が成長する健康医療」では、
 病気があっても無くても、
 「脳が成長しているか? 得意か? 老いていないか?」を
 診断するために脳画像を見ます。

 普通の病院に勤める医師が、こんな風に脳画像を読むことはないので
 脳の成長を見極める読影技術は、医学の範疇を超えた
 非常に特殊な技能であると言えます。

 しかし脳画像に写っているのは、まぎれもない「生身の」脳であり、
 撮影したときの状態を素直に捉えることができます。
 Dr.KATOが脳画像を見れば、目に見えない化学物質に頼ることなく、
 脳の成長状態や、働き具合を判断することが可能です。

 今回の「脳の健康医療セミナー」では、
 Dr.KATOの直伝を受けた小児医師が
 患者さんたちの前頭葉の成長を捉えた脳画像をご紹介します。

 ■■■ 寝たきりの人の脳 ■■■
 
 1967年、南アフリカで世界ではじめて行われた心臓移植手術によって、
 「脳死」についての関心が一気に高まりました。

 臓器提供者として、脳死患者を認めるかどうか・・・。
 この問題が急激に浮上したからです。

 脳死とは、「生きた体に死んだ脳」と表現されるように、
 大脳・小脳・脳幹など、すべての脳の活動が停止し、自発呼吸もできない
 状態でありながら、心停止には至っていない段階です。

 脳死となれば、90%が約2週間以内に心停止に至ることから、
 不可逆性、つまり“もう戻らない”ということが脳死の条件になります。

 一方、「植物状態」という状態は、一般的に脳死と混同されて使用され、
 誤った理解を招いているようですが、脳死とはまったく違った状態です。

 植物状態は、昏睡(こんすい)状態で、つまり大脳は活動していなくても、
 呼吸や反射を司る脳幹は生きているので、自発呼吸や反射も見られる状態を
 指します。脳死とは違い、人工呼吸器がなくても長年、生き続けることが
 できます。植物状態は、復活することもあり得るので、脳死とはまったく
 違う状態であると考えられています。

 病気によって寝たきりになった人を見ると、植物状態という言葉を
 思い浮かべる場合が多いようですが、これが当てはまらない場合もあります。

 脳の損傷によって、確かに歩いたり喋ったりできずに、寝たきりなのですが
 見えたり、聞こえたり、記憶したりできる状態があります。

 特に乳幼児期の脳が未熟な時に、脳に損傷を受けると
 このような状態になることが、しばしばあります。
 しかり彼らは、大脳が活動していない植物状態とは全く違って、
 大脳の一部に障害があるけれども、すべてを損傷しているわけではない、
 という場合です。

 こういう場合は重症心身障害と言われます。
 脳に重い障害がある状態を意味していると考えてください。
 しかし、Dr.KATOの長年の経験によると、大脳のすべてが機能していない
 植物状態はめずらしく、多くはこの重症心身障害に含まれる状態だと言います。

 本人が歩いたり喋ったり手を動かして表現することができないので、
 周囲の人たちと、脳画像で健康や成長を読み取れない医者が勝手に
 「植物状態だと思っていた」ということに過ぎません。
 でも実際には、本人には聞こえたり見えたりしているのです。

 脳がどのくらい働いているのか、その結果どのくらい成長したのか?
 それを見極めるために、脳の学校では“脳画像”を読みます。

 脳死・植物状態・障害、同じ「寝たきり」の人でも
 脳の状態はまったく異なっているのです。
 
 ■■■ 脳画像で前頭葉の成長が見える ■■■

 今年の「脳の健康医療セミナー」(12月11日(日)開催)では、
 長年、小児期に重い脳障害を抱えた子どもたちの医療に携わってきた
 大越優美先生が「脳画像で前頭葉の成長が見える」事実を発表します。

 幼少期に脳に障害を抱え、もう一生寝たきりだと思われた子や、
 うまく歩いたり喋ったりできない子の場合、
 「人が人たる所以」とも言われる前頭葉は
 どのようになっているのでしょうか?

 まさに「脳画像」から事実を読み取り、彼らの障害を抱えた脳が
 見事に成長していく姿を紹介していただきます。

 Dr.KATOがこれまれの臨床現場で目の当たりにした事実は、
 「植物状態はいない」という事実です。
 MRIをみても、大脳のすべてを失っているケースとは
 まだ出会っていません。必ずどこかが残っています。

 その場所を、脳の酸素消費を調べるCOE技術で確かめると、
 確かにその場所が酸素を使っているのです。神経細胞が動いている証拠です。

 外界にそれを伝えられないだけで、音が聞こえているか、光を受け取って
 いるか、体の感覚が残っていたり、中には言葉を理解したり、
 前頭葉が活動している例を多く見てきました。

 植物状態と思えば、周りの人が積極的に本人に働きかける意欲を
 失いがちです。でも言葉を聞いているという事実が分かれば
 周りが積極的に話しかけ始めるのです。

 脳に情報が入れば、脳は成長します。
 脳の死は事実としてありますが、
 脳は生きていれば酸素を使って成長し続けることも、また事実です。

 このような事実が、医療や教育界で常識になれば
 最期まで脳を使って積極的に生きることができる社会になると信じています。

 ――参考――――――――――――――――――――――――――――

 ※本日の特集記事は、12月11日に行われる
 「脳の健康医療セミナー2011」の下記の講演に関連した内容です。

  Ⅴ.脳の成長を見る脳画像MRI
     演題:脳画像で前頭葉の成長が見える
     講演:大越優美先生(東部療育センター小児科)

     演題:脳相診断でわかる“生涯元気”の脳ハウ10ヶ条
     講演:加藤俊徳先生(脳の学校代表)

  ぜひ貴重な講演を生でお聞きください!
  http://www.nonogakko.com/research/brf2011.html
 ――――――――――――――――――――――――――――――――

| | コメント (0)

2011年10月 4日 (火)

海馬が引き起こす発達障害

 骨折は、骨の怪我。擦り傷は皮膚の怪我。
 心臓病は、心臓の病気。白血病は血液の病気。

 では発達障害は、何の病気でしょうか?

 多くの人は「こころの病気」と思うかもしれませんが、
 この脳スクールタイムズの読者なら「脳の病気だ」と答えるでしょう。

 では、脳のどこがどんな風に病気になっているのかを
 たとえば、発達障害児の両親が納得するように
 どれだけの専門家が答えられるでしょうか?

 ■■■ 発達障害と海馬 ■■■

 MRIや病理像を診れば、今や脳の病気のほとんどは診断可能です。
 しかし発達障害は、MRIを見ても「正常」と言われて誤診されてしまう
 最たる疾患でした。

 もし発達障害が脳の病気ならば、
 当然、MRIや病理像に病因が写っていないわけがありません。

 脳の内部には「海馬(かいば)」という、
 記憶に関係していると考えられている部位があります。

 実は、この海馬に、発達障害の病因となる形態異常が隠されています。

  MRIを用いて、海馬の発達と、子どもだけでなく大人の発達障害を

 診断することができます。 

 海馬の成長は、胎児期から成人期までダイナミックに形態の変化があります。
 発達障害は、この海馬の形態的な発達が遅れた状態にあることが
 分かっています。

 ドーパミンとかアドレナリンといった目に見えないものよりも、
 形として、目で確認できる精度で、発達障害は脳から診断可能になりました。

 ■■■ 発達障害の診断 ■■■

 発達障害が長い間、脳からの診断ではなく、
 行動特徴から診断されてきたのには、様々な背景があります。

 海馬断面を垂直に設定するMRI撮影は、普通の病院では行われないため、
 発見が遅れた可能性があります。

 臨床医として、疾患を研究するのであれば、
 一発で病気を確定する技術や理論が必要です。

 また家族ならば、診断までに多くの時間と無駄な検査を繰り返すよりも
 トレーニングに時間を割きたいはずです。

 あーでもない、こーでもない、と色々な病院を回っても、
 必ずしも原因が特定できるわけではありません。

 病気を起こしているその原因、
 あるいは症状を引き起こしている中核の部分を知らないことには、
 その後の対処ができない、あるいは遅れるからです。

 本当にそれが実体のある疾患ならば、その原因をはっきりさせ、
 はっきりしたならば、次に何をすればいいのか、
 ステップを進めることができます。

 ■■■ 海馬は成長するのか? ■■■

 海馬が成長することを測定することができれば、まさに、
 記憶力が定量できると言っても過言ではないぐらい、
 海馬と記憶力は、密接な関係があります。

 だからと言って、記憶力は海馬以外と無関係ということではありません。

 海馬の成長具合や損傷によって、記憶の程度が変化していることを
 我々は、身をもって体験しているのです。

 現在、海馬の大きさは、MRIで撮影された脳画像によって、
 計測することができ、海馬は生後にも成長します。

 海馬の成長が、記憶力の成長と並行に推移するかどうかは
 今後の研究によります。

 しかし、海馬が何らかの情報に触れることで、海馬とつながった
 様々な脳番地が成長していくことは確かです。

 生後は、海馬に発達障害を引き起こす様な病因がある場合にも、
 海馬自体を鍛えるというより、海馬とその周辺の脳番地を
 積極的に伸ばすことの方が効果が上がることが分かってきました。

 ■■■ 発達障害のない海馬の健康管理はどうするか? ■■■

 発達障害があっても、なくても、
 長く楽しく生きるためには、海馬を鍛えることが必要であると同時に、
 海馬の健康管理が重要だと考えています。

 海馬は、お肌と同じで、放置しておけば老化しやすい繊細な脳番地だと
 考えています。では、海馬をどのように手入れしたら良いかが問題です。

 以前Dr.KATOが出演した「主治医が見つかる診療所」の中でも、
 75歳の男性の海馬は、驚くほどしっかりとしていて、
 20歳30歳の海馬と何ら遜色ない形を保っていました。

 しかし、海馬に老化のサインがないだけでは、
 長く楽しく生きるためには十分ではありません。
 海馬がある程度、成長している必要があります。

 海馬の成長は生後より始まり、40歳代まで成長していきます。
 したがって、40歳代までに、海馬を使って十分育てておくことで、
 老化しにくい海馬に鍛えられると考えています。
 
 【海馬の健康管理】
 一つ目は、日頃から海馬だけでなく、海馬の周囲の脳番地を使って
 強化しておくことです。意識的にものごとを覚えるようにしましょう。

 二つ目は、持続的な過剰ストレスの回避です。
 ストレスは脳の成長に必要なことである反面、過剰なストレスが持続すると
 ステロイドホルモンが過剰にでて、海馬萎縮の誘引にもなりかねません。
 鬱や引きこもりを誘引するような過度なストレスは避けましょう。

 三つ目は、思い出と学習の使い分けです。
 思い出すことと、新しいことを学ぶのは、海馬の前と後で
 役割を変えていると考える仮説があります。

 この仮説の通りだとすれば、海馬の場所の使い分けが必要になります。
 思い出にふけるだけでも不足、新しいことを学ぶだけでも不足。
 昼間は勉強、夜は家族との思い出話などを楽しむのがいいでしょう。

 四つ目は、左右の海馬の使い分けです。
 右海馬と左海馬では、成長に差があります。左海馬の方が右海馬より
 言語記憶の役割を担っていると仮説しています。

 したがって、海馬に過剰なストレスを加えないためには、
 記憶する内容の使い分けが必要です。
 言葉を覚えるだけでなく、地理などの空間的な記憶を
 バランスよく行うように心がけましょう。

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

| | コメント (0)

発達障害を引き起こすくも膜のう胞

--------------------------------------------------------------

脳実質の表面は、外側から、硬膜、くも膜、軟膜と3層の膜に包まれています。

くも膜は、3層の膜の真ん中で、「くも膜下出血」という言葉でも、
よく知られています。
しかし、「くも膜のう胞」はそれほど、一般に知られてはいません。

脳のMRIが脳ドッグでも撮影され、子どもの
脳画像撮影も、MRIによって非侵襲になったことから、
「くも膜のう胞」の発見率が上昇してきました。

一般的には、1000人に一人ぐらいといわれているよう
ですが、Dr.KATOの経験では、200-300人に一人
ぐらいではないかと思います。

くも膜のう胞は、脳表面の凹凸が急に変わる部位に
できやすく、くも膜が二重になって袋状になったところに
髄液が貯留したものと考えられています。

ですから、側頭葉の先端部分や海馬の近くにできやすく、
大きさも2-3ミリのものから10センチほどのものまで
大小あります。

脳室には、もともと髄液が流れていますが、くも膜のう胞
は、多くの場合、脳室と交通性がなく、外側に向かって
液体内部の力が働くことになり、なかなか自然に小さく
なりません。

このくも膜のう胞は、発達障害を引き起こすことが、
一番問題だと考えてきました。

もちろん、全く影響があるように思われない
くも膜のう胞もあります。
近親の大人でもMRIを調べたら、たまたま、小脳に見つかった人も
数名います。

Dr.KATOは、くも膜のう胞がどのように発達障害を引き起こすのかを
研究してきました。

実際に、言語の発達が遅れた子どもの中には、左脳の言語中枢に接して
くも膜のう胞が出来ていた場合がありました

「くも膜のう胞」は、側頭葉の先端にできやすいので、
海馬とその周囲が圧迫され、変形しやすくなります。

くも膜のう胞は胎児期から出来ている場合が多く、この場合には、
回転して発育する海馬の成長を阻害する可能性が高くなります。

子どもの場合、左海馬の圧迫の方が、言語発達に影響して
右海馬の圧迫が症状が出にくいと考えてきましたが、
全くそんなことはありませんでした。

言葉の遅れはわかりやすいだけで、
右海馬の圧迫症状は、別な症状を呈します。
例えば、怒りやすいとか、罪悪の分別、ルールを守る意識など
社会生活では重要な機能を持っているようです。

怖いのは、「症状がない」と思い込むことです。
発達性脳病変は、未来に成長する可能性を削ぐことが
問題なのです。

「くも膜のう胞」は、良性の髄液の袋ですが、
脳の成長を妨げる上では進行性であり、
二次的な悪性症状を持つ場合があると考えても良いのではないでしょうか。

小さくて、影響の少ない場合もありますが、
「くも膜のう胞」は、予防的に取り除くことが
脳の枝ぶりには必要だという考えます。
脳の枝が思いっきり伸びるためのスペースの確保が
必要なのです。

特に、海馬や扁桃体を圧迫している場合は、
海馬回旋遅滞症を引き起こしているので、
二次的な合併症が発生しやすいと考えられます。

右脳であっても左脳であっても、
手術にリスクに十分配慮しながら、
脳の枝を外に向かって広げたい脳番地のために、
脳への重石を取り除いてあげたいものです。

●くも膜のう胞のMRI脳画像に関するブログ記事

海馬を圧迫するくも膜のう胞のMRI診断

Dr.加藤の発達障害の処方箋

---------------------------------------------------------
●「脳と発達」の詳細講演は、12月16日(日)東京・市ヶ谷

脳の健康医療セミナー2012 【研究報告のトピックス】
①深刻な社会人の発達障害を疑ったら、まず脳を見る

②MRIでみた発達障害の海馬と子どもの言葉の遅れ

| | コメント (4)

« 2011年9月 | トップページ | 2011年11月 »