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2007年1月30日 (火)

広告の中にあるある脳の科学性

今週の社長のひとこと-------------------------------------------

マスメディアの取材を受ける側の科学者は、いつもまな板の鯉のような気持ちで、

取材を受けた番組の放映を見ていることが多いのではないかと思う。

 

あるある大辞典IIの酸素に関する番組に、コメント出演したことがある。

それ以降も何度となく依頼があったが、結局、お断りすることがおおかったり、

問い合わせを受けた後、プッツリと連絡が途絶えることが多かった。

ここ5年の間、いかに脳の情報を世間に公表していくかというテーマに

挑んできたし、考える時間を割いてきた。

 

その理由の一つは、関わってきたヒトの脳研究でも、その結果が、例えば、

脳外機能である静脈性下水道効果を計測しているのに、マスコミも、自称脳科学者らも

脳の働きとして、脳活図を見せて、誇大宣伝したり、

信憑性をだまって無視したりする現状を見てきたからである。

 

サルやネズミの実験でしか経験のない話を、まさしく「人事」のように話す場合もある。

心理学を脳そのものの話として雄弁に語ることもある。

 

ひとの脳があまり知られていない時代に、何とか心に理屈をつけようとした話を、

脳そのものが、見たり分析できるようになった時、どうしたらよいのか?

まるで、マスコミも脳科学者も「迷い子」のようである。

 

私も知らぬ間に、迷い子のひとりであるかも知れないが、迷わないためのちょっとした技術を

身につけようとしてきた。

すなわち、「脳は、形から入る」ことである。

もうひとつは、当社の掲げる一億人脳学者構想である。

脳は、すべてに人がもっている。すべての人が脳を語るにふさわしい条件が既にそろっている。

 

脳科学者だけが、脳を正しく語れる時代ではない。むしろ逆だろう。

謙虚に自分の脳をより成長させるために、脳を学ぶものが脳学者として増えることが世の中には

大事だと思う。

 

実態の全貌がわからない脳に入るのに、心理学という思想から入ったら、もう出口が

ないと決め付けたようなものである。

  

心理学を非難しているわけではない。脳と心理学のかかわり方には、ノウハウがある

ということだ。

 

さて、脳機能イメージングと呼ばれる活脳図には、広告技術とかなりかぶっている点が

あることに数年前、気がついた。

その手法は、きわめて簡単である。

「一緒に並べる」という手法である。

知名度の高い人や者、信頼度の高い事実と一緒に並べると、

受け取る側は、いっしょに陳列されたものも信頼性が高いと錯覚してしまう。

 

脳機能イメージングは、再現性の高い脳の形、脳解剖図MRIの上に、

静脈性下水道効果である脳外血管活性図を重ねて見せたことで、

この広告に成功したのである。

 

これは、進歩だと主張するひともいるだろう。

しかし、脳機能の錯覚は進歩ではない。単なる間違いだった。

 

一方、同じような並列する技術は、すべてがNegativeとは言えない。

なぜなら、専門的な予備知識のない視聴者に、短時間で、直感的に

伝達するために、少しづつ事実をつなげていく必要がある。

ここに、科学性とは何かという「あんこ」がある。

 

情報伝達の現場では、事実のつなげ方が情報の発信者の高等技術であり、

モラルの裁量であり、力量の幅なのである。

 

一方、取材を受けた科学者、事実の提供者は、「報道の自由」の名の下に、

放映後にはじめて、自分の提供した情報が、どのようにまな板の上で、おどったか?

を知ることになる。

事実の提供者は、最後まで提供した事実が、どのように料理されるか?

取材する側と契約を交わすべきだと思う。

 

提供する事実に価値があれば、それは高価なものであるはずだからである。

 

広告の中の科学性について、まだまだ、議論すべきことが多い。

サイエンスが文化になっていない日本にとっては、いいチャンスであると思う。

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Akebi

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2007年1月 9日 (火)

メジャーの証、脳とスポーツの面白さ保証付き!

今週の社長のひとこと------------------------------------------------------------------

毎年、正月の楽しみは、まとまってドラマやアニメが放映されることである。

普段、ゆっくり見ることができないで、この手の集中講義は、うれしい。

今年は、NHK教育テレビのメジャーを見た。

主人公本田吾郎の父、本田茂治は、横浜のプロ選手だった。

 

メジャーから移籍してきた超一流の投手から、ホームランを打った後、

次のバッターボックスで頭部の死球を受ける。

死球の直後、病院に直行して、検査を受けることなく、

翌早朝自宅でなくなった。

 

ドラマのつくりとしては、展開は早すぎて、物足らなさが残った。

もう一つの問題は、頭部死球を受けた選手は、

全員、頭部のMRI検査を受けるべきか?いかなは別として、

頭部死球で翌朝、死に至るのは、たんなる事故ではない。

まず、直行した病院で頭部CTを受けたと仮定する。

しかし、これでは、不十分である。

 

もし、すでに意識低下や強い頭痛や歩行障害などの症状があれば別だが、

頭部CTには、直後の、死球による脳浮腫を検出する感度はないと考えてよい。

そこで、頭部MRIによるメニューから拡散強調画像法を選ぶ、

拡散強調画像法ならば、初期の脳皮質の浮腫をある程度見逃さない。

軽度の脳浮腫でも検出できる。

 

インフルエンザの季節になったが、インフルエンザ脳症の初期症状は、

頭部CTでは検出できないので、救急外来でCTをとっても安心してはいけない!

 

2003年にMRIの基礎原理の発見者がノーベル医学生理学賞を受賞した。

ローターバー博士とマンスフィールド博士である。

 

この二人の基礎技術によって、非常に短時間で、ブレインアタックと呼ばれる

脳梗塞、脳浮腫が、早期に発見できるようになった。

本田茂治選手は、頭部死球の後、この脳検査を受けるべきであった。

 

しかし、これだけでは、不十分である。

例え、頭部死球後のCT、MRIの検査で異常が発見できなかったとしても、

12時間後、あるいは24時間以内にもう一度同じ検査をすべきであった。

この2度の脳のMRI検査によって鑑定されていたら、

本田茂治選手は死ななくて済んだ可能性が高い。

さらに、2ヶ月前後にもう一度、脳検査を受けることもありうる、

慢性硬膜下血腫が発症する可能性が残されているからである。

したがって、頭部死球による死は、事故ではなく、

その後の選手管理を誤った管理者責任である。

もし、医師がその場で診察して、翌日の検査でよいと判断したのなら、

それは、正当な判断とは言い切れない。

頭部死球でピッチャーは退場させられるルールになっているが、

そこまでシビアにルールを決めているのであれば、

2回以上の脳検査フォローは、プロ選手には必要だろう。

1泊病院で入院するぐらいの覚悟が必要である。

さて、話はそれたが、本田吾郎が、心にくいセリフをはく。

『野球の面白さは俺が保証する!』

これは、なかなか言えない言葉だ。いろいろな職業に従事している人がいるが、

「自分の仕事の面白さは俺が保証する!」といえる人は多くはないかも知れない。

自分を振り返ってみた。

昨年クリスマスを前にして他界した最愛の祖父は、

海の面白さ、漁師の面白さを背中で教えてくれていたことに気がついた。

もちろん、寡黙な祖父は、面白さを保証するとは言わなかった。

しかし、少年だった私は、祖父の背中と行動の中で、海に魅せられていった。

 

脳はどうだろうか?

はっきり言って、たまらない!たまらないほど面白い、究める価値がある。

肉体とともに鍛えぬく価値が脳にはある。

 

 

昨夜、TVをつけたら12chでカンブリア宮殿をやっていた。

出演者は、ニューヨークヤンキースの松井秀喜選手とサッカーの三浦和良選手である。

彼らに共通していたことが2つあった。

小学生の頃からプロ野球選手やプロサッカー選手になることに迷いがなかったことである。

もう一つは、もし野球選手やサッカー選手でなかったら、何になっていたか?

という質問に、二人とも、他は考えられないと答えていた。

同じ答えを10年以上前に聞いたことがあった。

黒澤明監督からである。

 

1994年、いずれノーベル医学生理学賞を受賞することになったローターバー博士が、

京都賞を受賞した。その2人しかいない日本の友人の一人として、京セラの迎賓館まで

ローターバー博士のご家族とともにお供させていただいた。

 

その年、黒澤明監督も京都賞を受賞された。

そこで、わたしは、失礼を省みず直接、監督に、

「もし、映画監督になられなかったら、どんな職業になられていましたか?」とお聞きした。

ところが、烈火のごとく「おれは、映画を作るために生まれてきたと思っている。」と

叱責されてしまった。

  

青ざめて、言葉を失った私をみて、

その後、語調を変じてやさしくフォローしてくださった。

てっきり、絵を書くのが好きだとおしゃっていたので、

絵描きになっていた…?という答えを予測していたが、まったく映画から、ぶれてはいなかった。

 

松井選手、三浦選手、黒澤監督に共通する心構えである。

超一流の条件の一つかも知れない。

 

彼らは自分の大好きなことをすることで、一番脳が働くのだろう。

そして、その分野を究めるための脳番地を、日々育てているのだろう。

大好きなことは、もっとも脳番地が働くのである。

 

三浦選手は若い頃より、今の方が魅力的である。

松井選手は、巨人時代より、今の方が存在感、風格がある。

 

松井選手は、すべてのホームランを詳細に覚えて、状況説明

できるという。

ズボシだった。ある意味、そのぐらいはできると予測していた。

それほど脳番地機能を育てて使えなければ、瞬間的に

球筋を見極めて、バットコントロールできるものではない。

 

松井選手の脳の使い方が、そうなのである。

三浦選手の言動からも、脳番地の使い方が勉強になった。

その脳番地の使い方は、ここでは、教えない。

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参考:

メジャー、Major  http://www3.nhk.or.jp/anime/major/

カンブリア宮殿 http://www.tv-tokyo.co.jp/cambria/

京都賞 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%AC%E9%83%BD%E8%B3%9E

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