広告の中にあるある脳の科学性
今週の社長のひとこと------------------------------------------- マスメディアの取材を受ける側の科学者は、いつもまな板の鯉のような気持ちで、 取材を受けた番組の放映を見ていることが多いのではないかと思う。 あるある大辞典IIの酸素に関する番組に、コメント出演したことがある。 それ以降も何度となく依頼があったが、結局、お断りすることがおおかったり、 問い合わせを受けた後、プッツリと連絡が途絶えることが多かった。 ここ5年の間、いかに脳の情報を世間に公表していくかというテーマに 挑んできたし、考える時間を割いてきた。 その理由の一つは、関わってきたヒトの脳研究でも、その結果が、例えば、 脳外機能である静脈性下水道効果を計測しているのに、マスコミも、自称脳科学者らも 脳の働きとして、脳活図を見せて、誇大宣伝したり、 信憑性をだまって無視したりする現状を見てきたからである。 サルやネズミの実験でしか経験のない話を、まさしく「人事」のように話す場合もある。 心理学を脳そのものの話として雄弁に語ることもある。 ひとの脳があまり知られていない時代に、何とか心に理屈をつけようとした話を、 脳そのものが、見たり分析できるようになった時、どうしたらよいのか? まるで、マスコミも脳科学者も「迷い子」のようである。 私も知らぬ間に、迷い子のひとりであるかも知れないが、迷わないためのちょっとした技術を 身につけようとしてきた。 すなわち、「脳は、形から入る」ことである。 もうひとつは、当社の掲げる一億人脳学者構想である。 脳は、すべてに人がもっている。すべての人が脳を語るにふさわしい条件が既にそろっている。 脳科学者だけが、脳を正しく語れる時代ではない。むしろ逆だろう。 謙虚に自分の脳をより成長させるために、脳を学ぶものが脳学者として増えることが世の中には 大事だと思う。 実態の全貌がわからない脳に入るのに、心理学という思想から入ったら、もう出口が ないと決め付けたようなものである。 心理学を非難しているわけではない。脳と心理学のかかわり方には、ノウハウがある ということだ。 さて、脳機能イメージングと呼ばれる活脳図には、広告技術とかなりかぶっている点が あることに数年前、気がついた。 その手法は、きわめて簡単である。 「一緒に並べる」という手法である。 知名度の高い人や者、信頼度の高い事実と一緒に並べると、 受け取る側は、いっしょに陳列されたものも信頼性が高いと錯覚してしまう。 脳機能イメージングは、再現性の高い脳の形、脳解剖図MRIの上に、 静脈性下水道効果である脳外血管活性図を重ねて見せたことで、 この広告に成功したのである。 これは、進歩だと主張するひともいるだろう。 しかし、脳機能の錯覚は進歩ではない。単なる間違いだった。 一方、同じような並列する技術は、すべてがNegativeとは言えない。 なぜなら、専門的な予備知識のない視聴者に、短時間で、直感的に 伝達するために、少しづつ事実をつなげていく必要がある。 ここに、科学性とは何かという「あんこ」がある。 情報伝達の現場では、事実のつなげ方が情報の発信者の高等技術であり、 モラルの裁量であり、力量の幅なのである。 一方、取材を受けた科学者、事実の提供者は、「報道の自由」の名の下に、 放映後にはじめて、自分の提供した情報が、どのようにまな板の上で、おどったか? を知ることになる。 事実の提供者は、最後まで提供した事実が、どのように料理されるか? 取材する側と契約を交わすべきだと思う。 提供する事実に価値があれば、それは高価なものであるはずだからである。 広告の中の科学性について、まだまだ、議論すべきことが多い。 サイエンスが文化になっていない日本にとっては、いいチャンスであると思う。 -----------------------------------------------------------